和歌山読売写真クラブ(和歌山YPC)

Wakayama Yomiuri Photo Club
2025年度 例会作品    田中講師選
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            6月作品(6/14(土))
  夜の森の中で光るキノコ(シイノトモシビダケ)は1950年東京都の八丈島で発見された特産種と思われていましたが今や紀伊半島南部はその後最大の生息地となっています。作者は明るいうちに森に入り小さいキノコを地面スレスレのローアングルの構図で深い森の中でひっそりと光るキノコをドラマチックに捉えました。その撮影に至る努力に敬服します

 大阪万博に出かけた作者が出会った不思議なパビリオン。表面が鏡面上のミラー膜で覆われていてそこに映る景色もグネグネ動いている不思議な建物。作者は周りをカットして建物に映るもので構成しました。地面や人たちがこのグネグネの世界の中で動いている不思議がこの鏡の世界に閉じ込められたかのように構成した作者のアイデアに感心します。

  作者は大阪のメインストリートの御堂筋に世界的にも一級品の彫刻が設置されていて彫刻ストリートとして親しまれているものを題材にスナップ撮影を行っています。姉妹の銅像越しに視線の先に歩道を歩く人たちが消えゆく様を単焦点レンズの開放撮影の柔らかい描写の美しさが際立っています。彫刻でありながら息遣いを感じる素敵な作品となっています。
     
  「森の妖精」 福島健司   「ブラックホール」 松浦由裕   「街角」 笹山直樹
           5月作品(5/10(土))

和歌山市の名所和歌浦は平安の時代から和歌に詠まれた名所。片男波公園に通じる道は散歩道としても整備されています。作者はそこで出会った若いカップルの後ろ姿を見て映画から切り取ったような光景が目の前に現れてシャッターを切ったそうです。小津安二郎監督の名画「東京物語」のワンシーンを思い起こさせる素敵な作品となっています。

  何気なく見上げてみれば見慣れた高圧電線の鉄塔ににたくさんの人が作業をしている光景を目にした作者は思わずカメラに望遠レンズをつけてその様子を撮影しました。電線の張り替えや緩みの調整、ガイシの取り付けなど「電工」と呼ばれる作業員は高での作業と感電防止の対策、道具の落下を防ぐ対策等まさにこれぞプロフェッショナルの動きをとらえました。  作者は和歌山市の紀伊風土記の丘を散策し新緑の木々をバックに藤棚から垂れ下がる花のふさが逆光でキラキラと輝くクリスタルガラスのような花びらの透明感と蕾のグラデーションが美しいハーモニーを奏でています。爽やかな色彩と藤の花の長さのバランスが絶妙な切り取りです。
     
  「ふたり」 松井 崇   「ザ・プロフェッショナル」 井硲啓次   「藤簾」 玉置登美男
           4月作品(4/12(土))

 春の優しい光の中若いカップルが仲良く散歩をしています。作者は縦位置の構図の下四分の一左下の空いたスペースに日傘を差した女性と手を繋いで歩く男性。あとは満開の桜が占める右上斜めの太い桜の枝が画面にアクセントをつけています。女性の日傘の色が桜色でこの季節にふさわしい調和の取れた優しい作品となっています。

 作者のお孫さんがめでたく大学を卒業し新たな道へとそれぞれスタートを切るその瞬間を作者ははなむけの意味を込めて撮影しました。同級生の友達みんな袴姿で後ろを向いて卒業証書を掲げています。全員が後ろ姿での撮影はプライバシーを守る意味でもありますが撮られるみなさんは後ろ姿でも誰が誰かもわかるくらいの仲の良さが伝わる作品となっています。

  午後の日差しが傾く頃和歌山市の商店街ブラクリ丁に入ってくる親子。何か楽しそうな会話が聞こえてくるような長い影が地面に描き出しています。お子さんのジャンプしながら楽しく歩く様子やお母さんが手を繋いで見守りながら歩く様子が長い影だけで表現された作者の瞬発力と力量に敬服いたします。
     
  「降り注ぐ春」 森 和代  「それぞれのスタート」 竹本 繁  「ママと一緒」  山口隆章
           3月作品(3/8(土))
  田辺市の高山寺は早咲きの桜で有名です。寒さのせいで例年より開花が遅れているようですが作者は2月下旬桜の花に集まるメジロを狙っての撮影。光を読むことのお手本のような作品となりました。太陽の位置、バックの色、プラス気味の露出補正、望遠レンズの圧縮効果、高速連写、この一枚にかけた作者の技量と努力に感動します。   今年の節分は天体運行のせいで1日早い2月2日でした。和歌山市の紀三井寺では毎年恒例の豆まきが行われます。貫主と五人の袴姿の年男たちは、迫り来る人間の煩悩を表す赤鬼青鬼に向かって豆を巻いて退散させます。その後詰めかけた観客にはたくさんの福が撒かれるそうです。春を呼ぶ行事を記録するのも写真の持つ素晴らしい使命だと思います。   住宅の細い路地は坂道になっているのでしょうか。奥に従ってマンホールの蓋が道に沿って規則正しく並んでいます。手前には擦れかけた「止まれ」の「れ」の字。そこにそっと通り過ぎる白と黒の猫。不思議な浮遊感と作者を含めた人の気配が全く感じられない不思議な空間を縦位置構図でモノクロにして表現した作者の力量に感動しました。
     
  「春の日差しに包まれて」 福島健司   「節分 豆まき」 久保賀圓   「吾輩の道」 野島 満
          2月作品(2/8(土))

 田辺市本宮町の川湯温泉は全国でも珍しい川底から温泉が湧き出て毎年の冬の時期に川を堰き止めた大露天風呂が出現します。そこでは毎年1月に温泉に浮べた木の札を取り合う大カルタ大会が開催されます。作者は毎年このイベントを取材し撮影ポイントを決めてその一瞬を捉えました。湯気が上がる川の中様々な衣装の参加者達、見守る観客、大自然の中での大歓声が聞こえてきます。

  廃車置き場に住み着いた猫を捉えた2枚組の作品。猫たちは自分の棲み家として誰にも邪魔されないようこの場所は俺たちのものだと主張しているようです。ここにおかれた廃車たちは年代物の外国車や大型のジープなど品格さえ感じるそんな中に住み着いた彼らの姿にもなんだか高貴なものを感じてしまいます。モノクロで仕上げた作者の力量は流石です。   作者は白浜町の高台にある平草原公園で地面に落ちたサザンカの花びらを見てまるで真っ赤な絨毯を敷き詰めたかのような光景に感動してシャッターを切りました。サザンカはツバキ科の常緑樹。冬の間に開花し花が散る時は花びら一枚一枚がパラパラと散ってゆきます。地面に敷き詰められた真紅の花びらは右上に咲く花と相まって自然が造る美が心に伝わりました。
     
 「川湯温泉カルタ大会」 森 和代  「俺の居場所」 松井 崇  「赤い絨毯」 前田哲夫
         1月作品(1/11(土))

 昨年1218日は和歌山県串本町のロケット発射場からカイロス2号が発射されました。作者は早朝から橋杭岩の広場より発射を待ちました。大勢の観客の中脚立を用意していた作者は絶好の位置から青空に白い線を描きながら飛び去るカイロスをを捉えました。打ち上げは失敗に終わりましたが撮影に臨む作者の綿密な調査と準備がこの作品の完成度の高さを物語っています。

 和歌山市の伊太祁曽神社は日本書紀の時代の古くから木の神を祀る神社です。毎年114日から今年の農作物の作柄を占う卯杖祭が行われます。その際神殿では巫女の舞が奉納され作者はその姿を正面から画面いっぱいに捉えました。一瞬の光が巫女の背後から差し、切り詰めた露出により赤と白の衣装が巫女の舞の優雅さを表現、足元までも注視した作者の力量に感動します。

 生石高原は紀美野町と有田川町にまたがる県立自然公園。美しいススキの草原が広がり、山頂付近からは大パノラマの絶景が楽しめます。今年の初日の出を撮影に向かった作者は山頂付近があまりの人の多さにびっくりしました。若者たちがスマートフォンを向けて初日の出を撮影しているのです。日が昇る瞬間を女性のスマフォ画面越しに捉えました。初日の出の光が美しいラインを描いています。

「2号機発射」 福島健司 「新春の風」 山口隆章 「元旦を撮る」 松浦由裕
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