和歌山読売写真クラブ(和歌山YPC)

Wakayama Yomiuri Photo Club
2023年度 例会作品    田中講師選
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                 12月作品(12/9(土))          

  和歌山県北部かつらぎ町にある丹生酒殿神社の境内には樹齢800年とも言われる高さ25メートルにも及ぶ大イチョウの御神木がそびえています。毎年11月末から12月にかけて落葉が境内を覆い尽くすこの時期作者はまるで吹雪のように前が見えなくなるぐらいの黄色い落葉に驚きと感動で思わずシャッターを切りました。その気持ちが素直に伝わります。

 ようやく夜もあけはじめた海を眺めると雲間から朝日が登ってきました。水平線に灯りがついた一艘の漁船が走っています。今から漁場に向かうのでしょうか。静かな水面と顔を出した太陽の優しい光が波間を照らし、静かでなぜか心安らぐ作品となっています。広々とした空間の中の小さな船がこの作品のスケール感を表現しています。

 和歌山駅からのけやき通りは夕方からのイルミネーションで素晴らしく綺麗なプロムナード(散歩道)になっています。作者は広い車道の横のバスの車線から眺めるとけやきの木のイルミネーションが光のトンネルのように見えました。夜の闇は余計なものを隠し光は形を際出させる。そんな静かな作品となっています。

     
「葉ふぶき」  竹本 繁   「夜明けの漁」  土井喜澄   「光のトンネル」  松浦由裕  
               11月作品(11/11(土))     
  高野山の街中を流れる小さな川の流れには今を盛りの色づいた木々の葉っぱが落ちてきています。銀色に光るその流れは雄大な大河を思わせる力強さと苔むした川辺に散らばる紅葉はモノクロの世界を華やかな色鮮やかな世界に変えています。作者が見つけた小さな世界は画面の切り取りで雄大かつ艶やかな色彩に見事に変わりました。

 和歌山市の磯の浦海岸は作者の散歩コース。夕暮れ時の時間帯は波間に夕日が映え潮が引いた砂浜に鏡のように夕陽が映っています。そこにシギが一羽餌をついばんでいます。夕暮れの静かなひと時、波の音と夕焼けの光が誰もいない海岸で作者と鳥だけの一瞬を写し止めました。写真から感じる音と風や海の匂いなど五感に心地よい作品となっています。

 一日のうち太陽が作る光と影は時間と共に刻々と変わり同じ場所にいても季節やもちろん天候でも見える様子は変わります。作者は街角のポストに当たる光がうしろの板塀に不思議な影ができているのを見つけました。斜めから射す陽の光は板塀の質感とポストの鮮やかな赤、画面左上からの影のデザインを日常をアートにした作者のセンスが光ります。

     
 「せせらぎも紅葉」  森 和代    「夕食タイム」  野島 満    「町中に映える箱」  松井 崇  
              10月作品(10/7(土))    

 作者は三重県熊野市の鬼ヶ城と呼ばれる独特な地形を取材にゆきそこで岩に腰掛ける女性を点景に岩の大きさを表現しました。7000万年前に深い海に堆積した土が地表に現れ1800万年前からの激しい火山活動を経て紀伊半島の特異な地形が作られたそのままの姿を、光が指す時間帯を図り作品に奥行きと立体感を見事に表現しました。

 秋の彼岸の時期に田んぼの畦などに花茎の先に咲く強くそり返った真っ赤な花は彼岸花と呼ばれます。作者はこの花を人の視線ではなく虫の目線で捉えました。コンパクトカメラを使って片手で彼岸花の根元から空に向かってシャッターを切ることで今までにない視点の作品が生まれました。これからは蟻にも蝶々にもなった視点の作品ができそうです。

 作者は身近なところに素晴らしい造形があることを見つけシャッターを切りました。水面に映る橋の欄干なのでしょうか水面が揺れて縞模様が不思議な縞模様になっています。不規則なその形が色々想像させる単純ですが奥深い写真ならではの表現となっています。この場に居合わせてどう切り取るかの判断をした作者のセンスが光ります。

     
 「鬼ケ城」  久保賀圓    「花火じゃないよ」  前田哲夫   「みなもの縞模様」  竹本 繁
              9月作品(9/9(土))   

 夏の花ひまわりは成長すると大きな花は東に向かうそうです。花粉を媒介するミツバチはより温度の高い花に飛んでゆく傾向があり朝の太陽の光を受けたくさんの花粉が放出する時間がミツバチが働く時間となっています。作者は働くミツバチの姿を生き生きと捉えました。無駄のないシンプルな表現が素敵な作品となりました。

 映画「海街ダイアリー」の最後のシーンは四姉妹が鎌倉の海で波に戯れるシーンで終わりました。この作品を見てこの三兄弟が夏の海岸で煌めく波と遊んでいる姿がそれと重なりました。逆光の波を明るく表現し子どもたちがそれぞれ大声をあげて楽しんでいる姿をキラキラと表現しました。

 永年使われていた集合住宅でしょうか。その役目を終え解体される様子を見つけた作者はカメラを向けました。周りの環境に配慮し大型重機を操りながら慎重に崩してゆく様子は機械を操作する人と足場の上から支持する人たちの連携で慎重に行われる様子は作り上げるより難しい様子が写されています。

     
  「食事中」  竹本 繁   「いそ遊び」  松浦由裕   「解体」  笹山直樹
             8月作品(8/12(土))   
  夏を代表する花「ヒマワリ」、作者は照りつける太陽の下、咲き乱れるヒマワリ畑の中の特に大きな花に近づき少し下から空に向かってシャッターを切りました。画面右下から作者と同じ目線で太陽に向かう大きくて逞しい花が持つパワーが背景に広がる流れる雲の爽やかさによって一人の人格のように表現されました。

 磯の浦海岸は今海水浴やサーフィンで地元はもとより京阪神からのお客様で賑わっています。作者は毎日夕方の人出が少なくなった頃に散歩に出かけた時遠浅の砂浜の潮溜りに映る夏空を見つけシャッターを切りました。画面の大半が潮溜りに映る夕方の夏空、打ち寄せる波に戯れる僅かの人たち。この斬新な画面構成に作者のセンスが光ります。

 紀の川市貴志川町にある平池緑地公園は毎年6月初旬頃からハスが開花のシーズンを迎えます。作者は7月のある日大賀ハスの開花を目指して平池に向かいました。蕾は濃いピンク色ですが日を追うごとに花びらが白く変わる特徴で柔らかな優しさを感じるハスの花の向こうにはこの池の人気者の黒鳥が優雅に泳いでいます。色彩と画面構成が見事な作品です。

     
  「盛夏の大輪」  松井 崇   「海と空」  野島 満  「平池の夏」  山口隆章 
           7月作品(7/8(土))   

 有田市の仁平寺はアジサイ寺として親しまれ6月上旬には約1000株の紫陽花が境内に咲き誇ります。作者は咲き誇る花を探し境内を散策していると、可愛い兄妹が大きな紫陽花の花と遊ぶ様子をお母さんが携帯で撮影する場面に出会いました。お揃いの夏服を着た二人の後ろ姿は笑顔を想像できる楽しい作品となりました。作者の画面の切り取りが絶妙です。

 高野山真言宗の総本山金剛峯寺は真言密教の聖地として世界遺産に登録され参拝に訪れる人が後を立ちません。作者は境内にある蟠龍庭を訪れました。石庭としては国内最大級の面積を持つこの庭の砂紋に新緑のもみじの葉の影が美しく描かれているのを見つけシンプルに画面を構成しました。影が主役の構成が見事です。 

 作者のご自宅の近くにある生石山は今やインスタ映えのするスポットとして京阪神からの若者たちが集まる場所となっています。この日夕方車で走っていると火上げ岩から勢いよく上がる筋雲を見つけ車を降りて撮った一枚の写真には大自然の壮大なドラマが写されていました。見慣れた場所でも季節や時間などの変化を感じる感性が大事だと思いました。

     
  「きれいな花」  竹本 繁   「影」  久保賀圓  「雲たちのぼる」  松浦由裕 
           6月作品(6/10(土))  

 海南市にある願成寺は別名あじさい寺として有名です。この時期境内はたくさんの紫陽花が満開。作者は梅雨のこの寺を訪れ、花の撮影をする時には雨が上がり日が差してきました。紫陽花の葉裏には大きなカタツムリが生き生きと動き出しました。画面全体が優しい光に溢れて葉裏から外界をのぞくカタツムリの生命力を感じる作品となりました。

 福井県の一乗谷朝倉氏遺跡の城下町を再現した施設に和傘と風鈴を配したカラフルな写真スポットを作者が訪れました。目の前には色彩あざやかな和傘、上にはたくさんの風鈴。作者は望遠レンズの圧縮効果を利用し縦位置で真ん中で2分しスローシャッターで撮影。それにより和傘の静と風鈴の動を一つの画面に収めた作者の力量に感服しました。

 山中を流れる小さな川の流れに周りの新緑が映えて画面全体が爽やかな緑に覆われたこの作品はこの時期ならではのまさに新緑の頃の作品となりました。画面奥からの光は周りの森の緑を水面に映し、川の両岸は年月を経て苔むし全てが静かな時間を感じさせ、見る人に心穏やかな気持ちにさせる癒しの作品となっています。

     
 「雨は止んだかな」  前田哲夫    「涼風」  山口隆章    「新緑の頃」  森 和代  
           5月作品(5/13(土))   
 旧正御影供とは、お大師様が奥之院にご入定なされました旧暦3月21日に、日頃からご加護を頂戴していることに感謝する法会です。今年は5月10日(水)がその日に当たりました。奥之院に通じる山道には煌びやかな法衣の僧侶たち、朱色の日傘を差し掛ける高僧の行列。石橋のたもとには今を盛りの石楠花の花、作者は荘厳な雰囲気の中、色彩の対比の瞬間を捉えました。  桜の名所の和歌山城公園は花が散ったのち新緑の季節となります。この時期の若葉の緑は透明感のある鮮やかな葉で和歌山城を囲む公園の木々全てが爽やかな光で覆われているようです。作者はこの時期お堀を周回する遊覧船を入れて縦位置のダイナミックな構図で切り取りました。美しい光、航跡の波、天守閣。視線の移動が手前から奥へと導かれる素敵な作品となっています。    那智の滝は落差133メートルを誇る日本一の名瀑で滝そのものが御神体で滝の落口にはしめ縄が張られています。作者は那智の滝を目にしてはるか上空から落ちてくる大量の水の勢いを望遠レンズで切り取り、高速シャッターで水の流れを止めることで落下する水が持つエネルギーを見せてくれました。刻々と変化する那智の滝そのものの神々しい姿を表現した作品となりました。
     
「シャクナゲ咲く奥之院」  久保賀圓    「お城の緑」  玉置登美男   「瀑布の表情」  松浦由裕 
           4月作品(4/8(土)) 

 山間からさす光に照らされる満開の桜、その下には菜の花。山間を走る南海電鉄加太線。真っ赤な電車は「めでたいでんしゃ」先頭車両の窓にはタイの目玉が描かれています。作者はこの絶妙なタイミングを偶然ではなくあらかじめ電車の通過時間と太陽の位置を計算して思い通りに描いたその一瞬を待って捉えて出来あがった作品なのでしょう。

 満開の桜並木が続く散歩道。道には桜の木の影が縞模様に描いています。作者は望遠レンズの圧縮効果を巧みに使ってその下を散策する父と母と娘をスナップしました。縦位置構図は奥行きの表現に適し画面左下の道の明るい向こう側に向かう家族の未来を思わせるこの作品は見る人の心も暖かく幸せにしてくれます。

  今年の10月を目処に閉鎖が決まっている有田市の製油所の夜景の撮影に向かいました。山の上から明るいライトに照らされて稼働している工場が一望できる場所には桜の花が咲いています。暗闇に浮かぶ工場群の明るさの中に桜をバランスよく調整されたストロボ撮影で工場夜景の最後の春を飾り、長い年月の感謝とお礼の気持ちに溢れた作品となりました。
     
「春のさかな線」  松井 崇  「桜の下で団欒」  前田哲夫   「夜景を彩る」  土井喜澄
          3月作品(3/11(土))  

 玄関の台に置いた花瓶の花に差し込むわずかな光、その微かな光の明暗を作者は見逃さずシャッターを押しました。水仙の花に当たるいちばん明るい光に露出を合わせ全体が暗いトーンの中に浮かび上がらせ、しかも暗部も描写した光を読んだ格調高いモノクロームの静物画を作り出しました。

 毎年33日のひな祭りに行われる粉河町の雛流し、今年は4年ぶりに行われました。同町の園児や児童たちが川に色とりどりの紙雛を流し健やかな成長を祈りました。作者は川の向かいから子供の足元、流し雛、水面に映る子供達の姿を斜め構図で動きを感じる無駄のない切り取りの作画は流石です。

 和歌山県の南串本町の海中にそそり立つ大小40余の岩柱が国の名勝天然記念物「橋杭岩」中でも弘法大師と弟子が拝み合っているように見える「拝み岩」が有名です。作者はその岩の間から昇る朝日を最適な画角とタイミングで捉えました。風景写真として例え動かない被写体であっても瞬間を捉えるシャッターチャンスは一瞬であることを知らされました。

     
 「冬陽」  野島 満 「流しびな」  森 和代   「朝の祈り」  竹本 繁
         2月作品(2/11(土)) 

 今年の125日はこの冬一番の強い寒気が日本付近に流れ込みここ和歌山でも早朝からの積雪で周りが真っ白の世界となりました。日頃見慣れた風景が一夜にして白銀の世界に変わってしまうこのチャンスに作者は根来寺の全景を捉えました。寒さをものともせず作品の狙いを明確にして撮影場所を選びました。光の周りも美しい作品となっています。

 今年の17日、和歌山市内の高校の書道部が市内の大型スーパーのイベントスペースで大きな紙に書き初めをする大筆書きパフォーマンスが行われました。作者は2階からの高い位置から見下ろすアングルから撮影、見事な筆跡で書き付ける黒装束の生徒の姿を斜め構図で勢いを感じさせ、書かれた清廉な文字が人格を表す清々しい作品にまとめ上げました。

  和歌山市の雑賀崎漁港は港に迫る山に斜面に民家が立ち並び独特の風景を醸し出している場所となっています。作者は港の対岸から昼過ぎの光を狙い建物にあたる光のグラデーションを望遠レンズで画面を切り取りました。港に停泊している漁船の集団が海に映り、視線を上げると建物が陰影をつけてまるで美しい絵画を見るような作品となりました。
     
「根来寺の冬」  玉置登美男     「書道パフォーマンス」  山口隆章    「海辺の風景T」  松井 崇  
        1月作品(1/14(土))

 和歌山マリーナシティのポルトヨーロッパは年末から翌年の2月まで光のフェスティバルが開催され夜はきらびやかなイルミネーションで飾られます。作者は回転する遊具の前に見守る二人を中心に動と静を左右対称の構図でまとめました。遊具に乗っている人の歓声と光の中を通る影、明と暗、煌びやかな色彩と共にコントラストの妙が見事な作品です。

 毎年正月10日に行われる初えびすは一年の商売繁盛を祈願し小判や米俵を模った吉兆と呼ばれる吉兆物をつけた福笹をいただこうと多くの参拝者が集まります。境内では巫女さんが神前で神様にご奉仕する神楽を舞います。作者は美しい舞の瞬間とその神聖な場の空気感を見事に映し止めました。

 三重県志摩半島南部の入海、英虞湾は賢島をはじめ大小様々な島々と真珠の養殖で有名です。作者は穏やかな海辺を朝日が昇る頃の水面を撮影しました。対岸の山をギリギリ入れ水面に映る明けゆく空と海に浮かぶいかだ、手前の船を止めるための木の杭が鏡のように写り大きな金色の水面に黒の矩形が効果的にデザインされて格調高い作品となりました。
     
「イブの夜」  森 和代       「神楽」  久保賀圓     「英虞湾の朝」  松浦由裕     
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