和歌山読売写真クラブ(和歌山YPC)

Wakayama Yomiuri Photo Club
2022年度 例会作品    田中講師選
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             12月作品(12/10(土)) 

 紀の川市貴志川町の平池は県下最大級のため池で水辺では多くの水鳥や渡り鳥が生息、飛来します。作者は池全体を周回できる遊歩道を散策するうちに水面と同じ高さの杭の上で一休みしている水鳥を見つけて撮影しました。水鳥の姿と空を映す水面がとても綺麗なグラデーションを描いています。

 日高郡由良町にある白崎海岸は、海に突き出た巨大な石灰岩の岬と青い海とのコントラストが得意な景観な所。この白崎海岸のシンボルが海の中にそびえる一枚岩が波に侵食されて大きな穴が空いています。作者はその穴を額縁に見立て夕暮れの赤く染まる空を捉えた時一羽の鳥が飛んできました。静と動、青と赤、空と海、様々な対比を感じる作品です。

 自然が織りなす広大な風景を前にしてあまりの感動でシャッターを押すことも忘れてしまうことがあります。写真はその感動を乗り越えて作り出すもの。作者はミクロの世界に目を向けました。道端に咲いていたたんぽぽの綿毛に朝露が光り、こんな小さな世界が広大な宇宙を思わせることを私たちに知らせてくれました。

     
「ひとやすみ」  太田信子 「夕映え」  松浦由裕 「朝露」  野島 満
             11月作品(11/12(土))   

 地上5メートルの上の青竹の舞台で一体の雄獅子が笛や太鼓の音に合わせて舞う木の本の獅子舞は500年の伝統がある和歌山県の民俗文化財です。作者は夜のライトに照らされた舞台の上の獅子舞を最前列から撮影しその動きと前列で見守るお囃子方の法被の赤い模様とはちまきの色彩を縦位置の画面に見事におさめました。

 全山秋の色に染まる高野山の街の中、この日の朝は小雨が降っていたのでしょうかみんな各々傘をさしての集団登校。作者は瞬時に画面構成を決めスローシャッターで撮影。左半分を占める紅葉の木々の下を歩く子供達の足元のブレが動感を感じさせ緑黄色朱色の木々の色と白や黒、黄色の傘のそれぞれの色彩のバランスが見事な作品となりました。

 有田川町の鷲ヶ峰はコスモスが咲く名所で山頂からは和歌山市内や湯浅湾、紀伊水道や淡路島まで見渡せる絶景スポット。作者は夕暮れの優しい光の中数輪のコスモスに焦点を合わせ望遠レンズの絞りを開放気味にして撮影。日没のオレンジ色と山並みのグラデーションのバックに白とピンクの花びらが透けて一幅の絵画を見るような作品となりました。

     
  「伝統の舞」  森 和代   「集団登校」  竹本 繁   「コスモス畑の夕焼け」  前田哲夫
             10月作品(10/8(土))  

 人と人のコミュニケーションの手段は携帯電話なしでは成り立たないくらい。若者たちは縦横無尽に使い世界中の人たちとも繋がってゆく今、写真の世界も世界中の人たちが見る時代となりました。作者は夕暮れ迫る生石山山頂でインスタ映えを狙った撮影をする若者たちを写真撮影の技術と見事な作画でアートな一枚の「写真」に仕上げました。

 那智勝浦の勝浦八幡神社秋祭りがコロナ禍の中、3年ぶりに開催されました。赤いハッピを着た若者たちが櫂伝馬(かいでんま)船に乗って漕ぎ出します。堤防の上には女子の学生たちが大勢で応援しています。海を舞台にした威勢のいいお祭りの様子が生き生きと描かれています。望遠レンズでの撮影が遠景と近景が圧縮されて祭りの迫力が増しました。

 ご家族で遊びに来られたのでしょうか。草原で虫籠を持った女の子が草の枝に止まった小さな虫を枝ごとカゴに入れてのぞいています。お日様の光が透明の虫かごから斜めに入った光で女の子のシャツの赤い猫ちゃん(?)がまるで一緒に遊んでいるかのようです。作者の優しい眼差しが感じられる素敵な作品となりました。

   
 「晩夏の思い出」  山口隆章  「がんばって〜」  赤阪生一  「採ったよ」  太田信子
            9月作品(9/10(土))  
  夕暮れの浜辺二人の少女が透明の傘をさしその周りには点滅する小さな光の電球がアクセントとなって輝いています。この光景を見つけた作者はインスタグラムに上げるためにさまざまな工夫をこらし撮影を楽しんでいる家族に撮影の許可をいただき大胆な切り取りと露出の工夫で自分のオリジナル作品に作り上げました。

 和歌山市の四季の郷公園で開催された竹燈夜は地域のボランティアの皆様の力でさまざまな工夫とアイデアで楽しいイベントになっています。ロウソクの優しい光が夕暮れの公園に浮かび上がる頃、作者は参加者も火を灯す手伝いをしている中で愛犬と共に火を灯す人を見つけワンちゃんの目線でシャッターを切りました。その柔軟な着眼点はさすがです。

 コキアは円錐状に茂る春まきの一年草です。まるで刈り込みをしたようにふんわりとした姿が可愛くそれがたくさん植えられるとコロコロとたくさんの卵が並んだようで楽しくなります。作者は目と口がついたコキアがぺちゃくちゃおしゃべるをしているように余計なものを入れずにシンプルに表現したことで主題が引き立ちました。

     
「なかよし」  土井喜澄     「竹燈夜」  山口隆章    「勢揃い」  竹本 繁  
           8月作品(8/13(土))   

 紀三井寺名草山山頂から昇る朝日は和歌浦湾に光の道を作ります。そこに突然あしべ橋をくぐり抜け現れたジェットスキー。波を立てて進む波紋は穏やかな水面を切り裂くよう進んでゆきました。静と動がドラマチックに、しかも立体的に一つの画面に表現された作者の力量を感じます。

 「地球の温度を2℃下げよう」を合言葉に毎年全国で展開している打ち水大作戦。和歌山では伊太祁曽神社が毎年の会場です。紀州産のヒノキオイルの入った水が使われ桶に入った水をヒシャクや手で撒かれました。作者は神官が手桶からまく水を高速シャッターで止め手の形と水の形の面白さと、後ろの赤い浴衣の女の子が画面を引き締めています。

 真夏の夕暮れの盆踊り会場はまだ昼間の熱気を孕んで汗ばんでいます。お盆のこの時期は親戚が集まり楽しいひととき。ヤグラの上には音頭や太鼓の人たち、照明は踊る人たちの影を地面に描きます。コロナ禍のなかった5年前の夏、作者は外に出られないこの時期を今までの作品を見直し見つけた一枚に時の流れと写真の持つ記録性を見事に表しました。

     
 「光の道の航跡」  和田雄次     「打ち水」  久保賀圓   「ふるさと」  森 和代  
           7月作品(7/9(土))  

 和歌山市和歌浦の紀州東照宮は毎年5月、徳川家康公の命日に合わせ「和歌祭」を行なっています。ここ数年コロナ禍で開催されなかったお祭りも今年は400年祭として大々的に行われました。作者はこの祭りの見せ場の一つ、東照宮の108段の急な石段をねりながら駆け降りる神輿の勇壮な姿を横位置で画面からはみ出す勢いと迫力で捉えました。

 名古屋の結婚式場に向かう石段で撮影されたという作者はまるで画面の中を定規を使って描かれたデザイン画のように画面中心のわずかに見える白いチャペルに吸い込まれるような画面構成が秀逸です。そして無機質にも見える画面にピンクのリュックを背負った女性が元気に石段を登ってゆきます。たとえ小さくてもその中に暖かさが添えられました。

  早朝高層階のホテルの窓からふと下を見下ろすと釣り人たちが数人湖面に糸を垂らしています。そこを毎朝の日課でしょうランニングをする男性が駆け抜けてゆきます。朝の光は長い影を作りその場をドラマチックに演出しました。何気ない世界が光と影、そしてカメラを構える場所でこんなに素敵なドラマを見つけ出した作者の柔軟な感性に感動しました。
     
 「神輿降ろし」  山口隆章   「幸せの階段」  前田哲夫   「朝の光」  竹本 繁 
          6月作品(6/11(土)) 

 和歌山市の磯の浦海岸は一年中サーフィンが楽しめるところで有名です。夕暮れ刻、作者は毎日の散歩で磯の浦海岸を歩いている途中頭の上にサーフボードを載せ波を待つサーファーを見つけました。金色に輝く遠浅の海、逞しい体型のシルエット、光るサーフボード。 絵画を見ているような無駄のない見事な画面構成に心を奪われます。

 「ツール・ド・熊野」は熊野古道周辺を舞台にした自転車レース。今年は3年ぶりに527日から3日間開催されました。作者は地元で行われるこのレースを毎回撮影し目の前で展開される迫力あるスピード感を流し撮りのテクニックで3枚組で表現しました。体全体を使って撮影することで自転車のスピードにシンクロする作品となりました。

  高野山最高職の法印は1年間弘法大師の名代として山内の重要な法会や儀式の導師を務めます。法印様の移動には朱塗りの籠が使われます。伝統の白装束をまとった担ぎ手は慎重に金剛峯寺の石段を降ります。作者はその担ぎ手の真剣な表情を画面いっぱいに捉えました。法印様を無事にお運びするための全員の緊張感が伝わる作品となりました。
     
「海を目指して」  野島 満  「ラストスパート」  赤阪生一   「慎重に」  森 和代
          5月作品(5/14(土)) 

 頂上で待つお姉ちゃんに向かって必死に岩山にしがみついて登ってゆく男の子。果たして無事に登りつくのでしょうか。ハラハラドキドキのこの作品は作者のお孫さん。広角レンズの効果をうまく使い下からのアングルで遠近感を強調し、縦位置の構図と相まって狭い場所でも広いスケールを感じさせる作品となりました。

  湯浅町と広川町の間を流れる広川では毎年2月中旬から3月下旬にかけてシロウオ漁がおこなわれます。作者は電灯を点けての夜の漁を取材し、四つ手網を上げる時壁に反射した伝統が網越しに光る一瞬をドラマチックに表現しました。今まで見たこともないシロウオ漁の作品となりました。

 毎年ゴールデンウイークの期間中和歌山マリーナシティーで花火ショーは大勢の観客で毎夜賑わいます。作者は会場から離れた浜の宮のサンブリッジを望むところにカメラを構えました。海に映る建物の光、その上に大輪の花火。波打ち際に三脚を構えるカメラマン。この光景を目の前で独り占めしているようです。

     
「さあ 登るぞ!」  松浦由裕!  「伝統の四つ手網漁」  久保賀圓  「独り占め」  土井喜澄
          4月作品(4/9(土))  
  満開の菜の花畑の向こうにはこれも満開の桜並木、それを眺める若いカップルはご夫婦なのでしょうか。畑のそばに置いていたパレットがお立ち台。真上の満開の桜の枝が真昼の日差しを遮る影を作っています。画面の中の色彩の全てが優しい春色で満ち溢れています。画面の中の二人の距離感、縦位置の画面構成、全てに心配った作品となっています。   早朝の和歌川の水面に朝日が差し始めた頃眠っていた鴨が一斉に光に向かって飛び立ちました。作者はこのように記しています。この場に出会う一瞬は、日頃の観察とその瞬間に備える準備が必要です。作者が捉えたこの作品には穏やかな水面に飛び立つ鴨が描く波紋、透き通る羽根の形の面白さが逆光というドラマの中で見事に演じられました。   日頃何気なく通り過ぎていた場所に、この時期こんなところに桜の木があったなんてと気づくことがあります。作者は日常見過ごすこの場所が満開の桜を引き立てるステージと見立て、より一層の効果を考えて夕方の遮光がバックの山を照らす時間帯を選んで撮影しました。桜の枝が大きく広げて舞い踊るような動きを感じさせる作品となりました。
     
「二人でお花見」  前田哲夫    「朝の飛び立ち」  和田雄次   「たそがれ時」  森 和代 
         3月作品(3/12(土))   

 毎年33日に行われる淡嶋神社のひな流しの行事を作者は3枚の組み写真で表現しました。全国から寄せられたたくさんの雛人形を船に乗せて海に流す様子をクローズアップ、望遠レンズでの切り取り、広角レンズでの撮影手法で全体の様子を行事の流れに沿って的確にまとめる力量はさすがです。

 和歌山市の重要文化財として認定されている不老橋は江戸時代後期に完成したアーチ型の石橋。作者は橋の勾欄部(てすり)の雲をデザインした彫刻と開けられた窓からのぞく玉津島神社の鳥居をモノクロフィルムを使って撮影しました。フィルム独特の粒子がこの不老橋の長い歴史を感じさせる効果を生み出しました。

  和歌山県湯浅町を流れる広川では毎年2月中旬から3月下旬にかけて「四つ手網」という特殊な網で漁を行います。春の訪れを告げるこの漁の様子を作者は後ろから少し高い位置を見つけ撮影しました。上げた瞬間に光を反射して銀色に光る網と水面の水の色、漁師さんの赤い服。画面の中に無駄なく配置された構成が美しい作品となりました。

     
「ひな祭り」  山口隆章    「ランカン」  土井喜澄     「伝統のシロウオ漁」  太田信子  
         2月作品(2/12(土)) 

 真冬の海岸とも思えないほど優しい日差しに溢れた穏やかな砂浜には散歩の途中のご婦人が二人と愛犬。作者が捉えたこの情景からはその時の風や温度、海の匂いなど五感を刺激し、作品を見る人があたかもその場所に一緒にいるかのような錯覚にさせられます。逆光をうまく捉えた露出のテクニックが見事に決まった作品です。

 和歌山市の伊太祁曽神社で毎年114日から15日にかけて行われる卯杖祭(うずえのまつり)はその年の作物の出来を占う「かゆ占い神事」と厄除け神事が2日間にわたって行われる伝統の行事。作者は日本書紀にも登場する歴史ある神聖なこの行事の雰囲気を丁寧に記録し3枚の組み写真としました。厳粛な雰囲気が伝わる作品となりました。

  滋賀県北西部の高島市マキノ町はスキー場で有名な豪雪地帯。作者はこの地に観光で訪れ、メタセコイア並木などを撮影しふと雪原に目をやると雪の祠の中にちいさな雪だるま。子供連れの親子が雪遊びをして作ったのでしょう。その時の笑い声が浮かんできます。遠くの雪山の景色を入れて縦位置の構図で引き締めた作者のセンスが秀逸です。
     
「昼下がりの午後」  和田雄次     「卯杖祭 小豆粥占い」  久保賀圓      「楽しんだ跡」  竹本 繁   
        1月作品(1/8(土))

 和歌山市北部の紀ノ川右岸河川敷に一本の銀杏の樹があります。作者は初冬の晴れた日黄色く色づいた銀杏をさまざまな表現で3枚の組み写真で表現しました。黄色い落ち葉の中で遊ぶ家族、太い木の幹、堤防を走るサイクリング、生活の中の自然をアングルを変えて見事にまとめた作品です。

 和歌山市加太の淡嶋神社は人形供養の神社として有名です。さまざまな人形が境内に集められた中に陶器で作られた七福神たちを見つけた作者は逆光の光と照り返しの反射光を見極めモノクロで表現しました。影を意識した構図で七福神たちがこちらに向かって福を持ってくるような動きを感じます。

 お正月は家族や親戚が集まり皆の絆を深める良い機会でもあります。そんな時には皆さんで記念写真を撮って残しておきましょう。年を経るうちにその一枚が家族の宝物となるでしょう。作者の地元の生石山山頂の火あげ岩での記念撮影、曇り空の中皆寒そうでそれぞれの姿が大自然の中での素敵な家族写真となりました。

     
「一本の銀杏」  玉置登美男       「福が来た」  野島 満     「家族」  松浦由裕     
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