和歌山読売写真クラブ(和歌山YPC)

Wakayama Yomiuri Photo Club
2021年度 例会作品    田中講師選
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            12月作品(12/11(土))   

なるほど、海に浮かぶ石造の橋は和歌浦の観光スポット観海閣に渡る三断橋、満潮の早朝海に映るその姿はフィルムを送るための穴、パーフォレーション。海に浮かぶフィルムのように見えた作者のセンスが光ります。早朝の静けさ、左上に浮かぶ細い月が画面のアクセントとなっています。

 和歌山市の和歌浦明光通りはかつて栄えた地元の商店街。今は人通りも少なく、扉を閉めたお店が多い中若い人たちが空き店舗を使って行ったイベントに大勢の人が押しかけました。洋品店でのカフェでマネキンのマダムを外から覗く人達。作者の店内からの視点で作品の品格が生まれました。

 山口県下関に浮かぶ離島角島にかかる橋は日本屈指の長さで有名です。コバルトブルーの海を渡る1780メートルの白い橋はそれだけでも写真になる風景。作者はそこを訪れた時悪天候で撮影を諦めかけた時一瞬の晴れ間に橋にかかる二重の虹、目の前のドラマに声を上げながら撮影する作者の姿が浮かびます。

     
  「パーフォレーションのある朝景色」 和田雄次      「マダム」  久保賀圓       「Wレインボー」  前田哲夫  
            11月作品(11/13(土))   

 自宅近くの高圧電線鉄塔の塗替え作業を見つけた作者は飛散防止のためのカバーの中で作業する職人が影絵のように見える場所を、太陽の位置、時間を計算に入れ撮影しました。身の回りで起こるこのような非日常をシンプルな画面にまとめた作者の力量を感じる作品となりました。

 磯ノ浦海岸は夏場の海水浴、風の強い時期のサーフィンなど京阪神からのお客様で賑わう所ですが、毎日の散歩を日課にしている作者は日没後誰もいない海岸に二人の女性が海に向かってハートマークを作っている姿に出会いました。淡い色彩の真四角の画面の下に小さく収めたハートマーク。作者のセンスが光る作品となりました。

  野鳥がこんなに近くで撮れるのか。これは剥製か、柿の枯木に止まるオスのヤマドリは長い尾が特徴の日本固有のキジ科の野鳥。作者は知り合いの柿畑でその姿を見つけ近づいても逃げないその姿を見事にとらえました。その羽根の模様の美しさ、美しい長い尾、真っ赤な顔の色彩。生き生きした野生の生き物の美しさに思わず見とれました。
     
  「高所作業」  竹本 繁     「ハートポーズ」  野島 満     「柿畑に珍鳥」  山口隆章  
           10月作品(10/9(土))   

 和歌山県紀美野町と有田川町にまたがる生石高原は関西随一のススキの名所。今が見頃のススキ野原を夕日が黄金色に染めていてその中を若いカップルが歩いて行きます。二人の間は気持ちとは裏腹に少し離れています。淡い恋心の行く末を見守りたくなるような素敵な作品です。

 木立の向こうは緩やかに流れる川でしょうか、日差しが対岸の森の木々にあたり川面に映っています。手前の木々は日陰になっていますが下の草むらには陽が差し込んでいます。大小の木の幹越しに緑のグラデーションが爽やかで自然の風景が素敵なデザインされたカットとなっています。

 山間部の田んぼは傾斜を利用しての稲作り。段々畑はそれぞれ地形に沿っていろんな形があります。作者は稲刈りが終わった棚田で稲を乾かす「はさがけ」が田んぼの形に沿って龍のようにうねって干され、その影のおもしろさと田んぼの周りを縁取る彼岸花。日本の秋をこんな小さな山里の片隅に見出しました。

     
 「光に包まれて」  前田哲夫     「静寂の刻(とき)」  松浦由裕      「秋」  小倉 清  
           9月作品(9/11(土))  

 和歌浦天満宮の急な石段を降りる小さな女の子とお父さん。赤い手すりを持ったお父さんが娘の安全を守りつつゆっくりと降りてゆく姿に親子の愛情を感じます。縦位置を望遠で切り取り、手すりの赤と画面下の灯のついた灯籠がモノトーンの画面に絶妙の効果を作り出しています。画面構成の妙を感じる素敵な作品です。

 奈良県のおふさ観音は毎年の夏境内に2500を超える風鈴が吊り下げられ、それらが風に揺られ涼やかな音色を一斉に奏でる様子は圧巻。作者は風が鎮まった時を下から広角レンズで色とりどりの短冊のパステル調の色彩が画面全体を覆うように捉え、風鈴の数の多さと量感を表現しました。風が吹くと一斉に響く涼やかな音を想像してしまいます。

 和歌浦の片男波公園に通じる遊歩道のそばで釣り人が今まさに釣り糸を投げました。作者はその日の朝、対岸の名草山から朝日が顔を出すときが大潮で海水が岸辺いっぱいに満ちる事を調べていました。水面は鏡のように山や空が映されています。このドラマチックな光景は日頃からの観察とデータの裏付けがあればこそできた作品ではないでしょうか。

     
 「急勾配」  久保賀圓     「涼風」  山口隆章    「朝の釣り人」  和田雄次 
          8月作品(8/14(土))  
  サーフィンは今回のオリンピック競技として中継され大波を乗りこなす姿に感動しました。作者はサーファーが集まる地元磯ノ浦の夕暮れ、海から上がった一人が持つサーフボードが夕日に輝く瞬間を捉えました。立ち向かうばかりではなく共に過ごす自然があることを見事に表現しました。

 写真のテーマであった祭りやイベントがコロナ禍の中延期や中止が多くなる中、万全の対策をとって行われた伊太祁曽神社で行われた行事の一コマ。間隔をとって踊るヨサコイチームを撮影するカメラ好きの巫女さんたちを撮影した作者は、共にシャッターを押す喜びが伝わる作品となりました。

 蓮の葉の上で踊る水玉は朝の光でキラキラ光りまるで宝石のように薄緑の葉の上をコロコロと動いています。茎の影が画面にアクセントをつけ、右上の空間も効果的です。蓮の花が美しく咲くこの季節、作者の観察する視点の広さに感心すると共に光を読むことが発見につながることを教えてくれました。

     
  「夕陽に輝く」  野島 満    「激写中」  森 和代    「水の宝石」  竹本 繁 
          7月作品(7/10(土))  

 6月から7月にかけて雨の季節に咲くアジサイは写真作品を作る上で絶好の被写体となっています。落葉の低木なのでカメラアングルは自由自在。作者は薄紫のガクアジサイを真上からの撮影。淡い色彩の中に周りを取り囲む白い装飾花。自然が作る美しい工芸品を見ているような作品です。

  なんともぴったりのタイトルではありませんか。池の小さな岩の上の一等地に陣取る亀、その場所を狙うちょっと気弱な亀、今から水から上がって甲羅干しをしたいのに先約がいたのかと驚いている亀。三者三様の姿に焦点を当てて切り取った作者のセンスが光る作品となりました。  なんとも不思議な作品ではないでしょうか。防波堤越しに海を見渡す風景なのですが、遠近感が感じられず、抽象絵画のような矩形の中にそれぞれ違った世界が集まっています。上部を占める空には刷毛で描いたような白い雲、画面下左右の防波堤、その間の海と灯台。風景とは違う世界観を感じさせる作品です。
     
 「色どり」  久保賀圓     「場所取り」  竹本まき子     「潮の香り」  太田信子  
         6月作品(6/12(土))    

 和歌浦片男波海水浴場はシーズンオフ。しかし夏至に近づくこの時期は初夏を思わせる日和に作者は海水浴場の半透明の風除けの向こうにふたりの男女を見つけシャッターを切りました。ぼんやりと浮かぶ背景と手前の雑草のピンクの花の色彩のコントラストがふたりの時を演出しています。

 奈良県天川村の龍泉寺での一コマ。幼い女の子が石段の上でひざまずいてお祈りしている姿を見つけ親御さんに了解を取った上で撮影した一枚。この作品から色々な想像が浮かんできます。ご両親はもちろんお爺ちゃんお婆ちゃんと共に祈りの気持ちを日頃から教わっているのでしょう。

 ポルトヨーロッパにあるドアの取っ手をよく見てみたら小鳥のクチバシのようだった。という作者は何気ないところや日頃見過ごしてしまいがちな場所から見えてくるものに関心を抱いているようです。差し込む光や雲の形、水溜りなど面白いものがみぢかにあることを教えてくれる作品です。

     
  「ふたりの時」  太田信子     「祈り」  土井喜澄    「小鳥のいるドア」  野島 満   
         5月作品(5/8(土))    
  画面の右下に見える車専用の道路と標識、それと対象に人専用の遊歩道。日差しが歩道を歩く人の影を長くして午後の時間を計れます。この作品は高い位置からのアングルと斜めに入れた遊歩道が画面をデザイン的に捉え、歩道を歩く人物の影が主役となる作者のセンスに脱帽します。

 和歌山マリーナシティーの遊園地にあるジェットコースター。作者は毎朝早朝の散歩を日課にし日の出の時間にその支柱越しに上がる朝日を捕らえました。ジェットコースター部分を切り取ることで幾何学模様の矩形のシルエットが強調され黒とオレンジの力強い画面となりました。

 半透明の波板の壁に映る生活。団扇や丸いアミなどの形はわかりますが全てがおぼろげで画面の向こうとこちらの世界が違っているような不思議な感覚に襲われます。光を捉えて写真として定着させるフィルムの原理を思い出させるこの作品で作者の発見する目の広さを感じます。

     
 「黄昏の遊歩道」  山口隆章     「遊園地の朝」  和田雄次    「おぼろげ」  森 和代 
         4月作品(4/10(土))  

 春の柔らかい光を浴びて可憐に咲くチューリップの花2輪、白い花弁と淡いピンクの花弁が光を受け止めるかのように広がった形は清楚で清々しく花弁の付け根は黄色のアクセント。マクロレンズの浅いピントを利用た前ボケの美しさが画面の奥行きと格調を作り出しました。

  作者は奈良県に桜を求めて撮影に向かう道すがら郵便配達のバイクが通り過ぎた瞬間思わずシャッターを切った一枚。こんな山道を配達に向かう郵便局員の気持ちになって浮かんだタイトルはこの時期だからこそ。春の日差しと桜祭りの提灯、そして桜の花に導かれての幸せな走行。

 奈良県室生の枝垂れ桜。深い山の谷間にさく枝垂れ桜の古木。左上からの太い枝から垂れ下がる何本もの細い枝には桜の花がたわわに咲いてまるで暖簾のように揺れています。逆光で光る花がバックの山の緑に生えて春の光の柔らかさの中に左上の太い枝が画面を押さえ、枝垂れが軽やかに風に揺れているよう表現できました。

     
 「可憐に咲く」  野島 満    「幸せな走行」  竹本まき子  「花のれん」  竹本 繁 
        3月作品(3/14(日))  

 厳寒の高野山の朝、四国八十八ヶ所の巡礼を終えお礼参りに向かう一向の道中は、降り積もった雪が掃き清められ無事にお参りされるよう石段の中央に造られた道を登ってゆきます。白と黒のモノトーンの静寂の世界の中に人を想う信仰の心の暖かさを感じる作品となりました。

 加太の淡島神社は全国にある同神社の総本山、毎年3月3日は全国から集まった雛人形を海に流し供養する日、今年は晴天でも風が強い中での神事、一瞬捲り上がる神主さんの裾、吹き飛ばされそうな大幣。露出を切り詰め、神事の一瞬を主役にした作者のセンスが光ります。  

  和歌山県の有田川町と紀美野町にまたがる生石高原はススキの名所で有名です。作者は黄金色に輝く草原を狙って準備していたところ、岩の上に座って遠くを眺めている人物に気付きシャッターを切りました。夕暮れの時間帯、澄んだ空気、たなびく雲、足元に光るススキ。空間を大きく取ったスケールの大きな作品となりました。
     
「静寂の21段」  和田雄次   「雛流し」  太田信子  「何想う」  松浦由裕
        2月作品(2/13(日))  

 紅葉の名所奈良県桜井市にある談山神社での一コマ。十三重の塔を中心にスケールの大きな撮影とは逆の、建物の角に引っかかった一葉の紅葉をとらえたこの作品はバックの三段に分かれた淡い色彩の中に紅葉の赤が浮き立ち格調高い余韻を感じる作品となりました。

 滋賀県守山市の早咲きの菜の花畑は雪の残る比良山を背景に絶好の撮影スポット。それゆえに誰もが同じような構図の作品になりがちのところ、作者は土手を愛犬を連れて散歩する初老の人を主人公にし菜の花畑を画面の引き立て役に仕立ててドラマを作り出しました。

 これは何を撮っているのかと思わず見入ってしまいました。コンクリートの門柱でしょうか、金具が取れた跡が、いかつい親父が薄目を開けてこちらを睨んでいるようにまさにドスの効いた声で「なんか用?」と言っています。作者の観察眼とユーモアのセンスが光りました。

     
「紅葉ひとつ」  土井喜澄        「春風吹く」  山口隆章       「なんか用?」  j前田哲夫     
        1月作品(1/10(日))

 2021年元旦、那智湾から望む水平線から昇る太陽をたくさんの人が待ち望んでいます。作者は堤防の上に立って今年初めの日の出の瞬間をスマホで撮影する若者たちを背後から捉えました。望遠レンズの圧縮効果、人物のシルエット、その向こうの日の出、全てが調和した素敵な作品です。

 マリーナシティーでの夜のイルミネーションイベント。作者は青く光る光のトンネルを中心に、遠くの集団と手前の女性を対比し遠近感を強調、左上に赤く光る観覧車。右上には椰子の葉の緑。画面全体が円で構成されしかも立体的な奥行き感を感じさせるアート作品となりました。

  厳冬の高野山でふと目に止まった光景は板塀に強風で吹きつけられた雪。木の桟が影になって離れて見ればデジタルカメラの諧調を表すヒストグラムの波形のようで思わず何枚も撮影した中からの一枚。自由な発想と柔らかい感性が作品づくりに大切だと教えてくれます。

     
「初日ノ出」  赤阪生一       「光のアーチ」  久保賀圓     「ヒストグラム」  森 和代     
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