和歌山読売写真クラブ(和歌山YPC)

Wakayama Yomiuri Photo Club
2020年度 例会作品    田中講師選
写真をクリックすると拡大されます。   
       12月作品(12/12(土))

 地元のお寺が新しく建て替えられその経緯を記録している作者だからこそ、この晴れやかで儀式に則った上棟式の最高の瞬間を捉えることができたのでしょう。青空のもと三組の大工方が木槌を一斉に振りかざしその上にたなびく吹き流し。まるで舞台を見るかのような作品です。

 赤や黄色、緑にオレンジ、色とりどりの紅葉の葉が、黒く太い幹をバックにして柔らかな逆光に照らされて鮮やかに浮き立っています。作者は散歩の途中に見つけたこの場所を観察し、光が当たる最適な時間帯を見極めてシャッターを切って作り上げた作品です。

 紅葉の中を散歩する人たちの歩調はゆったりとして別の時間が流れているようです。左下から始まる白い道は右中央部に続く光の方へ、周りを囲む紅葉のトンネル、手前の女性の深紅の上着と右端の真っ赤な紅葉。作品を見る人たちをこの世界へ誘ってくれそうです。

     
 「上棟式」  野島 満      「色どり」  太田信子     「紅葉ロード」  前田哲夫  
       11月作品(11/8(日))  

 お孫さんの写真でしょうか。思いっきり遊びあそびまわってふとした一瞬、乱れた髪にあたる光がキラキラと眩しく輝いてその場の爽やかな空気感や優しい風を感じます。ほっぺの膨らみがなんともかわいい作品となりました。正面からではなくこのようなアングルからでも人物表現ができる好例です。

  青空の下、赤、黄、に染まる木々が光を浴びて自らが発光しているかのようにその色を主張しています。自然界の中で色彩のピークが訪れた瞬間、これも季節を通してのシャッターチャンス。これを逃せば二度と出会えない風景もあることを実感する作品だと思いました。

 あいにくのお天気ですが手前の湖の映る紅葉した木々の向こうに頂上が雲に隠れた羊蹄山にはうっすらと雪が被り冬の訪れがやってくる気配、構図を整えて撮影しようとしたとき突然カメラの前にスマホを構えた男性が!そこでシャッターを切った作者のユーモアのセンスが光ります。

     
 「見つめる」  松浦由裕      「秋日和」  久保賀圓     「記念撮影」  久留主慶子  
       10月作品(10/17(土))    

 あの真夏の灼熱がようやくおさまってきた頃、ここ生石山高原には初秋の爽やかな風が吹いています。作者は広角レンズを駆使して爽やかな青空と雲を大胆に取り入れ、二人の女性、岩の上の人物を左右に小さく配し空間の奥行きと広さのスケール感を見事に表現しました。

  赤ちゃんを抱っこしながらの撮影に夢中なお母さん。赤ちゃんは何を思って見ているのでしょうか。あるイベントで見かけた一瞬を逃さず捉えた作者はお母さんと同じ方向を向いていては捉えられなかったこの作品、アンテナを張り巡らせた作者の観察力はさすが。   岩出市の緑花センターでの撮影とのこと。作者は鮮やかな紅いハイビスカスを単なる花の撮影に終わらせず、この花の持つつややかさ、なまめかしさを感じバックが黒く落ち込む場所を探し撮影、植物ではなく生き物としての花の魅力を感じさせる作品となりました。
     
 「高原の秋風」  山口隆章     「見つめる」  森 和代    「魅惑」  野島 満 
       9月作品(9/12(土))  

 作者は日頃マクロ撮影やストロボ撮影を駆使して目に見えない世界を写真に定着する作品づくりをしていますが、今回は地球を回っている宇宙ステーションを捉えました。軌道の情報を集め、日時方向を割り出し、使う機材やレンズ、シャッタースピード等綿密に計算された習作です。

  猛暑日が続いたこの夏、涼を求めて入ったカフェは海辺を見渡す素敵なオアシス。作者は注文した飲み物をコマーシャルフォトのようにコップに付いた露、飲み物の位置が猫の足元、そして窓の桟、椅子の位置など細心の注意を払って楽しんで撮影している様子が伺えます。   これは一体何でしょうか。暗闇の中に浮かぶほのかな光に中にきらめく宝石のような水滴。一点に焦点が合っているため他は緩やかなソフトフォーカスの中に漂っているような美しい画面。作者は早朝近くの田んぼの稲につく水滴をマクロレンズで撮影、素敵なアートになりました。
     
 「きぼう」  小倉 清   「ひと休み」  竹本まき子   「田んぼの明かり」  久留主忠雄 
        8月作品(8/8(土))   

 茅の輪くぐりは心身を清めて厄災をはらい、無病息災を願う行事。今年は新型コロナウィルスの収束の願いを込めて作者はこの行事を捉えました。茅の輪を画面の中心に置き四方を竹の枠と画面構成を意識した中に浴衣姿の女性が輪を潜る瞬間、狙い通りの作品となりました。

 小雨にけむる山の中腹に瀟酒(しょうしゃ)な建物が数軒、この時期山の緑は刻々と変化し緑がだんだん濃くなってきます。まして雨に打たれた木々は汚れが流され緑のグラデーションが鮮やかです。作者はモノクロ表現で、見る人の想像力が色彩を感じるさせる作品となりました。

 フォトグラフは英語で写真の意味ですが、語源は光で描かれたもの。作者のこの作品は、光が創り出したと言えるでしょう。虫食いの紅葉の葉が光に透けて繊細な銀細工のように輝いた瞬間を逃さず捉えました。光を観察すれば見慣れた日常もこんなに面白くなることを教えてくれました。

     
「疫病魔退散」  和田雄次     「山里」  久保賀圓    「ブローチ」  久留主慶子  
        7月作品(7/11(土))  

 和歌山市山東にある足守神社は足腰の病を持つ人達やスポーツ関係の人達が祈願に来られる足の神様。この時期境内に足の形に切り抜いた願いを書いた短冊が吊るされます。作者は縦位置で奥行きと短冊の色彩を考慮し、この神社の特色を一枚の作品で見事に表現しました。

 高僧が出かける際に履き物と杖を揃える若い修行僧の姿を切り取ったこの作品は、光と影の境で繰り広げる色彩のドラマを感じさせます。赤い鼻緒の履き物、墨染の僧衣から覗く白のたすき、赤い杖が作る影、白と黒の中に占めるわずかの赤が画面の中に大きな存在となっています」

  水鉢に投げ込まれた紫陽花の花は日陰の中の木漏れ日でスポットライトが当てられたようにキラキラと光っています。作者は特に鮮やかな色彩所を選んで撮影、その際マイナスの露出補正が功を奏しました。白い花の質感を出すことで画面全体が格調高い作品となりました。
     
「足形の七夕」  山口隆章     「修行」  久保賀圓    「彩り」  太田信子  
        6月作品 

 朝の空を見上げると一面に広がるまるいリング状の雲。いつも持っているカメラのレンズで入りきらないと判断しスマートフォンに搭載されている超広角レンズを使うアイデアは、作者の被写体に対する思いをなんとしても形にしたいという熱い気持ちの現れです。

  これは写真でしょうか、絵画でしょうか。夕方の光に輝く砂浜に打ち寄せる波は金色のグラデーションを描き、「ただそれだけ」の美しさを醸し出す。日常の暮らしの中にでも一瞬美しいと思える光がある事を教えてもらえた作品でした。   日常の中でも、しかも主婦ならではの発見。ステンレスのヤカンの蓋に映った一輪挿しの花。これを写真に撮ってみようとする気持ちが今まで見たこともない新鮮な作品を生み出します。撮るものがないなどと言ってはいられませんね。
     
「まるい空」  和田雄次    「渚のハーモニー」  野島 満   「和みの一輪」  久留主慶子 
        5月作品    
 作者は近くの川に餌を求めてやってくるゴイサギを観察するうちに、人の気配を避けて隠れる場所がこの橋の下の水門と気づきそっと近づいて撮影したとのこと。水面に映る鳥のシルエットが額縁の中の絵画のように画面全体で美しいハーモニーを醸しています。    この時期家の中で過ごす日が続く中、作者は四季の郷公園に出かけて出会った光景。人がいない公園の昼下がり手押し車に肘をついてカメラを構え撮影している女性の姿、左端の木のシルエット、公園の広い空間にこれらを見事に収める作者の力量を感じます。  作者の観察眼は素晴らしい。川の中を流れくる流木を見つけ、謎の生物のような姿を、ネス湖の「ネッシー」ならぬ紀ノ川の「キッシー」と名付けたユーモアのセンス、川の対岸を入れた縦位置の構図、このの流木を見つけた瞬間にタイトルが決まっていたことでしょう。
     
 「憩いの場」  竹本 繁   「激写中」  森 和代   「キッシー」  久留主忠雄 
         4月作品   

 満開の桜の下、花見の宴で賑わう和歌山城公園の一角、今年は新型コロナウイルス感染拡大防止のため場内には宴会禁止の立て看板が掲示されています。作者は散歩の途中、例年は花見の特等席にこの看板があることで、早期収束を願いつつ今年の世相を切り取りました。

  高野山では毎年3月、修験者たちが山開きと四国霊場開きの合図となる護摩供養が行われます。作者は金剛峯寺から螺貝を吹きながら降りてくる修験者の列を望遠レンズで正面から捉え、適切なシャッターチャンスと絞り設定の効果で主題を浮き立たせました。   貴志川線沿線は桜満開の季節。作者はこの場所で桜の花の間を走る赤いオモチャ電車が鉄橋を渡る瞬間を待っている時、電車が来た瞬間、娘さんとお孫さんが前に出て写真を撮ってしまった。でもこれが実に楽しい作品となりました。これぞ「シャッターチャンス!」
     
「特等席」  太田信子    「高野山」  久保賀圓   「シャッターチャンス」  竹本まき子 
        3月作品  
 高野山奥の院、極寒の中での水行は命をかけての覚悟と一心不乱の祈りがこの行の厳しさを物語ります。作者はこの行事を行者と同じ気持ちで3枚の組写真でまとめました。背中からとらえたこれ等の作品は「祈り」の尊さと威厳が伝わる作品となりました。    なんともユーモアに満ちたタイトルでしょうか。ふと空を見上げたとき、雲の形を見て一瞬のうちにお寺の軒先と同じ形のようだと気がつきためらいなくシャッターを切ったそのスピード感は、常に意識しながら撮影に臨んでいる作者のセンスが光りました。   四季のある日本では植物は、一年の中で生まれ、花が咲き、実がなって枯れてゆくその繰り返しで種をつないで行きます。作者は枯れた草木の美しさを感じ曇り空のグレーをバックにデザイン画のように切り取りました。よく見れば枝の先端に春の息吹がのぞいています。       
     
「一心不乱」  和田雄次    「軒先と似てる」  竹本 繁   「初春に」  小橋佳世 
        2月作品(2/1(土))
 福井県にある「御誕生寺(ごたんじょうじ)」は猫寺とも呼ばれる、境内にたくさんの猫が飼われている寺院。作者はお坊さんと一緒に日向ぼっこする猫を絶妙のカメラアングルで捉えました。慈愛に満ちた老僧のお顔と安心しきった猫の関係はまさに「ほっこり」。 

 冬空の雲は日が傾いてオレンジに染まってきました。ススキやコスモスで有名な生石高原はこの時期閑散としている中で、作者は沈みゆく太陽を案内板で隠し、上部を覆う黒い雲、木立の間から見える景色を横長の画面にし、壮大なスケールの作品を作り出しました。  

  つたえ歩きから初めて一人で歩いたその瞬間、その一歩を逃さず捉えた作者の狙いは見事です。このお子さんのご家族にとって宝物の一枚となりました。こんな大切な写真はプリントにしてアルバムに残しておいてください。何年か後に見返す時を想像してみましょう。
     
「二人でほっこり」  前田哲夫    「あしたの天気は」  松浦由裕    「人生初の一歩」  山口隆章   
        1月作品(1/11(土))

 街の中には様々な魅力的な被写体があふれています。それは季節や時間、天候などの違いで目の前に現れるかどうか、そしてそれをうまく捕まえられるのか。作者は橋のたもとに咲く赤い花を川面に映る景色の中に見事に捉えました。

 毎年冬の一時期貴志川町の「平池」はたくさんのイルミネーションで彩られています。作者は初めて訪れたこの会場を前に青の光を海に見立て上部に池に映る色とりどりのイルミネーションをデザイン的に配置したセンスが光ります

 庭に植えた植物に真っ赤な蕾がつきました。そこに光が当たり画面が浮き上がります。作者はそのタイミングを待ってシャッターを押しました。望遠レンズを使い黒と白のバックをぼかし圧縮効果も相待って立体感が出ています。

     
「川辺に咲く」  野島 満       「青の世界」  森 和代     「可憐な蕾」  久留主慶子     
 < 会員作品ページINDEXへ戻る
 Copyright @ 2003-2020 Wakayama-YPC All Rights Reserved.