和歌山読売写真クラブ(和歌山YPC)

Wakayama Yomiuri Photo Club
2019年度 例会作品    田中講師選
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         12月作品(12/14(土))  

 かつてここを走っていたチンチン電車(和歌山軌道線)のトンネルは今では近隣の人たちの遊歩道。作者は散歩する老夫婦、自転車で走り抜ける人たちを一瞬のタイミングで写し止めました。トンネルの暖かい光と少し覗く外光が不思議な世界へと誘います。

 和歌山マリーナシティーで行われている夜のイルミネーションでの一コマ。きらびやかな電飾の中でふと見つけた不思議な足跡。そこにあたるスポットライトを利用してのスナップ。作者独特の目線と発見に感動を覚えます。

   都会の公園でしょうか、池に映るビルの間にすっくと立ち上がる黄葉した木々、晴れ渡る空との色彩もさることながらその場の空気感をも感じさせる作者のセンスが光る作品となっています。
     
「ノスタルジックな鵬雲洞」  和田雄次       「チェンジ!」  前田哲夫        「黄葉」  太田信子     
        11月作品(11/9(土))

 長野県安曇野の美術館でのスナップショット。作者はある美術館での手洗いでふと見つけた小窓から差し込む光の先に雨に煙る木立、暗い室内がガラス窓を小さな絵画のように見せ、しかも光がさす方向を開けた作者のセンスが光ります。  

 気持ちよさそうに水浴びする鴨は逆光の光の中で思いっきり羽を打ちふるわせています。画面いっぱいにはじける水滴がキラキラ光っています。撮影ポイント、シャッタースピード、無駄のないフレーミング三つが揃った作品です。  

 山歩きを趣味とする作者は八幡平を自分のペースで歩きながら気になったところを撮影してきたとのこと。草原に吹く秋風、高い雲の流れ、少ない要素でその場の空気感を縦位置で奥行きと広がりを感じさせる作品を作り上げました。  

     
「外は雨」  竹本 繁       「武者震い」  久留主忠雄     「草もみぢの先へ」  小橋佳世     

               10月作品(10/19(土))

 運動会でふと目に止まった光景から発想を広げた秀作。グラウンドに敷かれたブルーシートの上に置かれた水筒や持ち物が点在する様が河の流れのように見え、生徒の赤い帽子の列が色彩の対比に効果を生んでいます。

 湯浅町の灯篭祭りでの一コマ。風車の仕掛けをつけているのでしょうか、男の子がふーと風を送って回している瞬間を灯篭の光だけでとらえたこの作品は見守るお姉ちゃんの視線と男の子の台に置かれた右手、無駄のない画面構成です。

 真夏の空に浮かぶ雲はモクモクとわきあがり、青空と雲の白さのコントラストが冴え渡り質感を感じる時があります。作者は雲の形にトイプードルが左の象のぬいぐるみにじゃれているかのように見えたのでしょう。絶妙のタイトルです。

     
 「水筒の河」  森 和代       「もっとまわって」  竹本 繁      「子象さん!待ってよ〜ワン!」  玉置登美男   
                9月作品(9/14(土))

 高校の運動会は、クラス全員が一致団結する楽しい行事。真夏の熱気が残るグラウンドでは全員が大縄跳びにチャレンジ。縄を回す男子は全身に力を込めて、飛び上がる女子たちは空に浮かぶ雲に見守られ地面にそれぞれの影を描く青春真っ盛りの作品となりました。

 作者は長年小さい虫の世界の一瞬の動きを何とかして止めようと試行錯誤してストロボを同調させる特殊装置を自ら作って撮影に臨んでいます。カミキリムシの羽を広げて飛ぶこの作品も虫の生態を観察し出来上がった見事な瞬間を見せてくれました。

  全国的にここ串本の橋杭岩は風景写真の最高の撮影ポイント。早朝からカメラを構える人たちが絶えないところです。この作品は、風景とは違う別の切り口を見せてくれました。タイトル通り年配のご夫婦の会話が聞こえてきそうなあたたかさを感じる作品です。
     
「せーのー」  竹本まき子      「かみきり」  小倉 清    「語らう」  久留主慶子    
              8月作品(8/10(土))
  熊野地方を中心に国内外のチームが参加する自転車の国際レースで力走する選手を見事な流し撮りで捉えた一枚。雨に濡れた道路に車輪が映り、左の選手に合わせたカメラの動きが見事に同調、体幹の動きを止め、そのほかのブレが強烈なスピード感を表現した力作。   蓮の葉に溜まる水はそも表面をコロコロと転がるように動いて、真珠玉のようにきらきらとその美しさに見とれてしまいます。作者は大胆に蓮の葉をトリミングし今にもこぼれそうな水の上に落ちたハスの花びらを小舟に例え、流れ行く刹那をシンプルに表現しました。   熊野那智大社の扇祭りは毎年決まった日時に開催される那智の火祭りとし知られたお祭り。作者は十二体の扇神輿が白装束の人たちに先導されて降りてくる瞬間を的確な露出、構図、タイミングで捉えました。当日は雨が上がったことでで地面が濡れたのも幸いし祭りがグッと引き立ちました。
     
  「雨中のロードレース」  赤阪生一      「ハス舟」  山口隆章      「那智の扇祭」  太田信子   
            7月作品(7/13(土))  
朝日が指す洗面台の上に置かれたガラスコップの中に立てられた赤と青の歯ブラシのアップの写真、ただそれだけの中にさまざまなドラマが浮かんでくるこの作品は、「写真」は周りの状況の中の身を置いて「発見」するだけではなく、「作り出せる」ことを教えてくれました。  和歌山市の岡崎地区で伝わる盆踊り「団七踊り」は県指定の文化財として長年この地区の人たちによって守り伝えられています。作者は毎年この踊りを記録するとともに歌舞伎をもとに踊られる三人一組の敵討ちの様子を的確にフレーミングし作品としました。

 山形県にある加茂水族館は種類、数ともギネス記録にも認定されているクラゲの水族館。直径5メートルの水槽に浮かぶ数えきれない水クラゲの前では子供を抱っこしたお母さんがスマートフォンで撮影しています。青の光に包まれたそのスケール感に圧倒されます。

     
 「ラブ・ストーリー」  久留主慶子      「団七踊り」  森 和代    「青の世界」  前田哲夫   
           6月作品(6/8(土))  

 なんともユニークなタイトルでしょうか。作者は毎年行われる「和歌祭」の撮影の途中、堤防に腰をかけ祭りを楽しんでいる外国人の足元に伸びる影を見つけて撮影、その画面を一瞬で無駄のない構成に仕上げる作者の力量を感じます。

 水郷のある街近江八幡。作者は、水路のそばに咲き誇る菖蒲の花の黄色、若々しい新緑の葉の緑、朱色の橋。画面に散りばめられたこの優しい色彩を、左下に流れ来る水面を水鏡にして奥行きを出す情緒豊かな作品に仕上げました。  

 高野山上の神聖な行事の一瞬を作者は背後から写し止めました。行列は整然と奥に続き、法印様の輿を担ぐ白装束、高僧の緋色の法衣、手を合わす信者の手元には朱色の杖、神聖な場を少ない色彩で見事に表現しました。

     
 「足長おじさん」  和田雄次    「菖蒲咲く水郷」  玉置登美男    「お練り」  久保賀圓  
          5月作品(5/11(土))  

 爪を立てて岩をガシッと掴む巨大な恐竜の足はよく見れば岩肌から生えている大きな木の根。作者は日頃からこの場所が雨で濡れるのを待ち撮影、生き物の血が通った肌の質感を表現するための作戦と観察力に感動しました。

 作者はえびす顔のハッピを着た男性の後ろ姿を見つけてとっさに横の三味線を抱えた女性に声をかけて横に並んでもらったのでしょう。にっこり笑った女性の笑顔が作者の絶妙の声かけの旨さと演出に生き生きした作品になりました。

 不思議な建物と白い一本道、池を斜めに走る道の上では散策する人たちが点在しゆったりとした時間が流れています。右下の道にしゃがみ込んで何かを見つけた小さな子供達の姿が画面全体の支点になって絶妙のバランスを取っています。

     
「恐竜の足」  野島 満    「えびす顔」  太田信子   「集う人々」  竹本 繁 
        4月作品(4/13(土))  

 いつもこの場所で撮影する作者の前に、卒業式を終えた仲良しの女子中学生4人が別れを惜しむように海に向かって佇んでいます。午後の日の光、流木で作ったブランコが彼女たちの思い出の時を感じさせる素敵な作品となりました。

 日頃散歩コースの途中でふと見かけた光景を記録する作者が目に留まったものは風のない池に泳ぐ水鳥が作る波紋でした。周りの状況を廃し風のない静かな池と2羽の水鳥が作る波紋の形の美しさに自然が作る造形美を感じました。

 この時期日頃気にも留めなかった木々がいきなり華やかな衣装を纏って輝き出す桜の季節。作者は早朝自宅の近くの資材置き場の片隅がわずかの間主役となるこの桜はどんな桜の名所より美しいと感じたことでしょう。そんな思いが伝わる作品です。

     
「海に向って」  赤阪生一    「静かな波紋」  坂東捨一   「職場の春」  森 和代 
       3月作品(3/9(土)) 
 富山県井波市は欄間や祭り屋台の木彫で有名な町です。作者は龍の飾りを作成している職人に撮影をお願いし、そのたくましい手元、よく手入され使い込んだノミ、右下の龍の目が相まって職人の人物像が想像される作品となりました。  店先に並べられた奇妙な形の大根たち、その一つ一つに顔を描いて笑いを誘っている野菜売り場に思わずシャッターを切った作者は、面白い素材をこんなタイトルをつけて、より一層の笑いの想像力を膨らませることに成功しました。

 高野山真言宗の総本山金剛峰寺の新たな座主の就任を披露する晋山式が3月5日営まれ、作者は早朝から行われる行事を取材、境内の神社に収める巨大な御幣を持ち上げる僧侶と赤い鳥居の色彩がこの作品の品格を感じさせます。

     
「作業場」  松浦由裕    「オーディション待ち」  竹本まき子     「御幣奉納」  和田雄次  
     2月作品(2/9(土))  

 今年の和歌山市消防署の出初式での作品。和歌山城のお堀に向かっての一斉放水のタイミングを計って、作者は太陽の位置を見て虹が出る場所へ直行したそうです。PLフィルターの効果もあって放水と虹が青空に見事な弧を描きました。

  春節祭は旧暦の正月を祝うお祭り。天王寺公園で開催される中華圏で最も大切な祝日のお祭りでの若い女性たちが歌い踊る姿を大胆にクローズアップし、3枚にまとめた作者のエネルギーはこの女性たちに負けてはいません。

  南海電鉄加太線を走る名物列車「めで鯛電車」はピンクと青の車両。その2両が連結し難波駅を往復するイベントを事前に情報を得て、紀ノ川の鉄橋で撮影すると決めた作者の様々な方面にアンテナを張り撮影に向かう姿勢に脱帽です。
     
「消防出初式」  久保賀圓   「時の娘たち」  笹山直樹   「記念列車帰る」  山口隆章  
   1月作品(1/12(土))  

 ここ和歌山市の今年の成人式は1月6日、まさにその日の朝に撮影されたこの作品は作者のお孫さん。晴れ着の着付けをしているのはお母さん。親子三代の幸せがこの作品に写っています。手に持っているスマホが「今」ですね。

 気持ちのいい青空にぽっかりと浮かぶ雲。海岸に並んで皆さんは何を眺めているのでしょうか。視線の先に見えるものを想像し、この作品を見ている我々も皆さんの列に並んでしあわせな気分になってしまいます。

 奈良県天理市の駅前にある古墳を模したイベント広場での撮影とのこと。独特のデザインの建物を造形として最適のアングルを探りながら撮影されたこの作品は、白と青の空間のバランスが平面としてみても見事にまとまっています。

     
「成人式の朝」  山口隆章   「しあわせの海」  松浦由裕 「縞模様」  前田哲男 
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